九寨溝は中国四川省北部のアバ・チベット族チャン族自治州九寨溝県にある自然保護区であり、1992年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている。
寨溝は石灰岩質の岷山山脈)中、標高3400mから2000mに大小100以上の沼が連なるカルスト地形の淡水の湖水地帯である。谷はY字状に分岐しており、岷山山脈から流れ出た水が滝を作り棚田状に湖沼が連なる。水は透明度が高く、山脈から流れ込んできた石灰岩の成分が沼底に沈殿し、日中には青、夕方にはオレンジなど独特の色を放つ。また、流れに乗って運ばれてきた腐植物が石灰分に固定され、植物が生え、独特の景観を見せる。ジャイアントパンダの生息地のひとつとしても有名である。
チベット人など少数民族の居住地としても知られ、「九寨溝」の名もチベット人の村(山寨)が9つある谷であることから付けられたものである。観光道路沿いにも3つの集落があり、そのうちの1つである樹正寨は観光地となっている。また、域内にはチベット人による宗教施設(寺院・塔・マニ車(正しくはボン教のため「マシモ車」)等)が点在している。なおこの地域はチベット仏教よりもボン教が盛んで、コルラの方向やマシモ車を回す方向がチベット仏教とは反対の反時計回りである。九寨溝内にある寺院「扎如寺」もボン教寺院でありその他の宗教施設もすべてボン教のものである。祈祷旗であるタルチョーも各所で見られるがボン教のタルチョーである。しかし日本のマスコミやガイドブックなどでは「チベット仏教」と紹介されていることが多い。
1970年代に森林伐採の労働者によって偶然に発見された。
九寨溝を強く印象付けるもののひとつに、独特の青い水があげられる。白い砂地の場所に少しの水が流れている状態でも水は僅かに青く見える。この青い水の理由は一般に水中に溶け込んでいる石灰分(炭酸カルシウム)の影響であるとか、湖底の苔によるとか、光の屈折率によるものなどとよく言われる。
九寨溝の水は飽和した炭酸カルシウムが微細な浮遊物を核として沈殿するために極度に透明度が高い。そのため、深さ20メートル以上の湖底までもより浅く感じられる(浅く見える理由は水と空気の屈折率の違いによる)。
水は可視光の内、長波長の成分(赤い光)を吸収する性質がある。そのため深みでは、水面から入射して湖底で反射した光の内から青い光だけが眼に多く届くようになり、結果として青い水に見える。また、深みでは光量が減少して暗くなるために水の青さに深みが増す。
微細な浮遊物のために水中浅所での散乱が多いと、赤い波長部が十分に吸収されていない光も併せて届くようになり、水の色は青みが薄まる。湖底に苔が生えている場所では青みに緑や黄色が加わる。かつ太陽光や空の状態も影響し、加えて水面で反射する光にもよって変化する色彩が生まれる。
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